Ai川 13回 「つらいときほど、簡単に」
家族を亡くしたあとの手続きは、思っている以上にたくさんあります。
私自身、親を亡くしたときに、それを経験しました。
悲しむ間もなく、役所や金融機関などで、さまざまな手続きをしなければならない。
「次は何をすればいいんだろう」
一つずつ確認しながら進めた記憶があります。
そんな経験があるので、大分県別府市の「おくやみコーナー」という取り組みを知ったとき、気になりました。
別府市では2016年、家族が亡くなった後の市役所での手続きを支援する「おくやみコーナー」を設けました。
今では同じような窓口を設ける自治体が各地にありますが、その先駆けとなった取り組みだそうです。
きっかけは、市役所の若手職員たち。
市民がいくつもの窓口を回らなければならない、いわゆる「たらい回し」をなくせないかと考えたことから始まったといいます。
亡くなった方について一度情報を伝えると、必要な手続きを整理し、書類の作成も手伝ってくれる。
場合によっては、遺族が各課を回るのではなく、担当する職員の方が「おくやみコーナー」に来て手続きを進めます。
これを知って、私は、
「なるほど、逆にすればいいのか」
と思いました。
普通は、市民が役所の仕組みに合わせて動きます。
健康保険なら、この窓口。
介護なら、こちら。
税なら、また別の窓口。
行政から見れば、それぞれ別の制度です。
でも、遺族から見れば、すべて
「大切な人が亡くなった後の手続き」です。
同じ出来事でも、見る側によって景色が違うのだと思います。
行政サービスというと、「制度を正しく、丁寧に説明すること」がまず大切です。
もちろん、それは欠かせません。
でも、親切とは、説明を丁寧にすることだけではないのかもしれません。
何度も同じことを説明しなくていい。
どこへ行けばいいのか迷わなくていい。
つらいときには、できるだけ考えなくても手続きが進む。
そんな仕組みにしておくことも、一つの親切です。
親を亡くしたときのことを振り返ると、手続きそのもの以上に、
「次に何をすればいいのか分からない」
ことが負担になるとに思います。
私の場合、おくやみコーナーではありませんでしたが、年金から介護まで西有家支所の方々がまとめて対応くださり、助かりました。
別府市の取り組みを始めたのが、現場の職員たちだったということにも、私は少し惹かれました。
市民に一番近いところで仕事をしているからこそ、
「これは、もう少しやり方を変えられるのではないか」
と気づくことがあります。
「市民に分かりやすく説明する」から、もう一歩進んで、
「市民が迷わなくてもいいようにする」。
つらいときほど、簡単に。
そんな市役所のあり方を、私たちも考えてみたいと思います。
南島原市長 相川 武利