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第10回市長コラム

最終更新日:

Ai川 第10回 「私たち抜きに、決めないで」

前回、「できない」という言葉について考えました。

能力がないのか。

方法を知らないのか。

必要な手段や環境にアクセスできないのか。

誰かの助けがあればできるのか。

それとも、まだできないだけなのか。

同じ「できない」でも、理由はずいぶん違います。

そんなことを調べている中で、もう一つ、気になる言葉に出会いました。

 “Nothing About Us Without Us.”

日本語では、

「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」

と訳されています。

AIに「これはどういう言葉?」と聞いてみました。

もともとは、障害のある人たちの権利を求める運動の中で大切にされてきた言葉だそうです。

障害のある人に関係する制度や支援を、

「きっと、これが必要だろう」

「こうしてあげた方がいいだろう」

と、本人がいないところだけで決めない。

本人に聞く。本人も一緒に考える。

その考え方は、国連の障害者権利条約にもつながっています。条約をつくる過程そのものにも、多くの障害当事者や団体が参加しました。

なるほど。

前回紹介したユニバーサルビーチについても、車いすを使う人にとって何が難しいのかは、実際にその人に聞かなければ分からないことがあります。

便利だと思ってつくったものが、実際には使いにくいかもしれない。

良かれと思った支援が、本当に必要としているものとは違うかもしれない。

「その人のために考える」ことと、「その人と一緒に考える」ことは、似ているようで違います。

“Nothing About Us Without Us.”

ちなみに、ウクライナのゼレンスキー大統領はこれをモジって、トランプ大統領がロシアと直接交渉しようとした時に抵抗しました。

“Nothing About Ukraine Without Ukraine .”

ここで、またAIのことを考えました。

AIに、

「高齢者は何に困っていますか」

「子育て中の人は何を必要としていますか」

「障害のある人には、どんな支援が必要ですか」

と聞けば、たくさんの答えを出してくれます。

それは考える入口にはなります。

でも、

目の前にいるその人が、何に困っているのか。

それをAIが本人の代わりに答えることはできません。

この言葉は、障害者運動から生まれたものです。

でも私は、市政を考えるうえでも、忘れたくない姿勢だと思いました。

子どものことを考えるなら、子どもの声も聞く。

若い人のことを考えるなら、若い人にも聞く。

高齢者のことを考えるなら、高齢者にも聞く。

そして、できれば「意見を聞く」だけではなく、考えるところから一緒に入ってもらう。

もちろん、すべての意見をそのまま政策にできるわけではありません。

それでも、

本人がいないところで、「本人のため」を決めすぎていないだろうか。

時々、自分に問いかけてみたいと思います。

“Nothing About Us Without Us.”

短い言葉ですが、なかなか重い言葉です。

 

         南島原市 市長 相川武利

 

※内閣府「障害者白書」では、障害者権利条約の成立過程とともに、このスローガンが紹介されています。内閣府「令和2年版 障害者白書」

※外務省「障害者の権利に関する条約」でも、条約起草への障害当事者の参画とこの言葉が紹介されています。外務省「障害者の権利に関する条約」


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