Ai川 第12回 これまでのモデルの手前から、考えてみる
前回教育はオランダに学ぶと言いました。長崎とオランダには、長い付き合いがあります。というかシーボルトにふれるまでもなく、日本の近代化は「蘭学事始」から始まりました。
江戸時代、海外との交流が厳しく制限されていた時代にも、長崎の出島はオランダを通じて西欧とつながる窓口でした。
医学や科学をはじめ、さまざまな新しい知識がオランダから長崎へ、そして日本各地へ伝わっていきました。
実はオランダは、土地が狭くスペインから独立後は、風車で水をかき出して干拓地を拡大しました。資金もなく株式会社を考案して国民が資金拠出して東インド会社を作りました。
そんなオランダからまた一つ、新しいアイデアを知りました。
「オランダ体育」です。
特定のスポーツを前提にその技術を身につけることを目的とするのではなく、走る、跳ぶ、投げる、バランスをとるなど、さまざまな「動き」それ自体を学ぶ。
子ども自身がやってみたい動きを選び、自分なりに挑戦する。
そして何より、
「体を動かすって、楽しい」
と感じることを大切にする考え方です。
これを知って、なるほどな、と思いました。
南島原でも少子化が進み、子どもの数そのものが減っています。
例えば、野球。
高校野球長崎大会では、南島原市にある1高校は、他の高校との連合チームでの出場になっています。
野球をやりたい子がいても、一つの学校だけではチームをつくることが難しくなっている。
これは野球だけの話ではなく、子どもの数が減っていけば、サッカー、バレー、さまざまな団体競技で、チームを編成することが難しくなっていきます。
もちろん、合同チームをつくる工夫も短期的には必要です。
他方、オランダ体育の考え方を知って、できるだけ多くの子どもに運動が好きになってもらうことができないかと思うようになりました。
「どうしたら、体を動かすことが好きな子が増えるだろう」
走るのが楽しい。
跳ぶのが楽しい。
ボールを投げるのが楽しい。
まず、そんな経験をする子どもを増やす。その中から、
「野球をやってみたい」
「サッカーも面白そう」
「今度は別のスポーツもやってみたい」
という子が出てくるかもしれません。
これまで野球をする子を増やしたいなら、野球を教える。
一見、それが一番の近道に見えます。でもそれって人口増加状況でのモデルじゃないの?偏差値と同じ。母数が増えるので全体のレベルを上げなくてもそこそこののチーム編成ができました。
でも、子どもの数そのものが減っていく時代には、それぞれの競技が限られた子どもたちに参加してもらおうとするだけでは、難しくなっていきます。みんなの運動能力を高めることをしないといけません。
だったら、まずは「体を動かすことが好きな子ども」を増やしてみる。
一つひとつの競技から見れば、ずいぶん遠回りです。
でも、その大きな土台が広がれば、そこから野球へ行く子も、サッカーへ行く子も、これまで知らなかったスポーツを始める子も出てくる。
結果として、それが地域のさまざまなスポーツを続けていく力になるのかもしれません。
人口が1700万人のオランダがオリンピックやパラリンピックそしてサッカーワールドカップであれだけ活躍できているんですから。
人口が減っていく時代には、目の前の問題を直接解決しようとするだけではなく、
「そのモデルの前に、何があるんだろう」
と考えてみる。
かつて長崎にさまざまな新しい知識を運んできたオランダ。
今度は「体育」というところから、人口が減っていく地域のことを考えるヒントを一つもらったような気がします。
今回は、AIの出番はありませんでした。
南島原市長 相川 武利