それでは、令和7年度における施政方針につきまして、ご説明申し上げます。
1 自然環境 ~人と自然が共生するまちづくり~
はじめに、基本柱の1点目「自然環境 ~人と自然が共生するまちづくり~」でございます。
【脱炭素施策等の推進】
まず、脱炭素施策等の推進についてですが、現在、日本では、年間約11億トンの温室効果ガスが排出されており、国は、2050年までに、これを実質ゼロにするよう取組を推進しております。
本市におきましても、令和3年に、脱炭素社会の構築に向けた「ゼロカーボンシティ宣言」を表明した後、2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロ実現に向けた「脱炭素全体計画」と「地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を策定し、脱炭素化への取組を進めてまいりました。
令和6年度は、国や県の補助事業を活用して、公共施設等の照明のLED化や高効率空調機器の導入などに取り組みました。また、9月には、ミナサポのPPA事業により導入された、布津福祉センター「湯楽里」及び口之津小学校の太陽光発電システムによる電力の供給もスタートしたところです。
令和7年度も引き続き、公共施設等の照明のLED化や高効率空調機器の導入を進めるとともに、新たに、県の重点対策加速化推進事業補助金を活用して、市民及び小規模事業者を対象とした、太陽光発電設備及び蓄電池の設置補助事業を創設することといたしております。また、家庭や事業所などにおけるごみの減量化は、市全体のごみ処理にかかる経費の削減と温室効果ガスの排出抑制に直結することから、引き続き、各種リサイクルの推進、生ごみ処理機購入補助などを実施するとともに、広報紙やホームページ、懸垂幕、環境学習など様々な機会を通じて、ごみの減量に関する啓発や協力の呼びかけを行ってまいります。
【南部リレーセンターの建設】
令和8年度から市内全域の可燃ごみを諫早市の県央県南クリーンセンターで処理することに伴い、県央県南広域環境組合を事業主体として、廃棄物運搬中継施設となる「南部リレーセンター」が南有馬衛生センターの敷地内に建設中であり、令和7年度の完成を目指して工事が進められております。また、既存の焼却施設については、令和7年度までのごみの受入れを予定しておりますが、令和7年度は施設解体に伴う調査設計に着手するなど、令和8年度からの解体に向けた準備を進めることにいたしております。
2 郷土文化 ~郷土の誇りを守り活かすまちづくり~
続いて、基本柱の2点目「郷土文化 ~郷土の誇りを守り活かすまちづくり~」でございます。
【世界遺産センター整備事業】
世界遺産センター整備事業につきましては、令和8年度の供用開始に向けて、建築工事、展示工事、外構工事を進めるとともに、運営面につきましても検討を深めていくこととしております。
世界遺産センターが、観光客や市民など、多くの皆様が世界遺産である原城跡を中心に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」について学べる施設となるよう、また、本市の観光振興や地域振興につながるよう、引き続き事業の推進に努めてまいります。
【定住移住の促進】
定住移住の促進につきましては、市外からの移住促進に向け、「南島原に住みたい」と思っていただけるよう、引き続き情報発信や移住相談に取り組んでまいります。
これまでの取組により、毎年80人前後の移住者の方々を受け入れております。また、移住希望者を後押しするため、今後も住宅改修を実施して移住者に貸し出す事業や、お試し住宅の拡充などに取り組むとともに、新たに、空き家の活用や管理、相談対応などを行う民間事業者を「空家等管理活用支援法人」として市が指定し、市と法人が連携して空き家の活用に取り組む体制を構築することで、更なる移住促進に努めてまいります。
3 産業経済 ~賑わいと活力を興すまちづくり~
基本柱の3点目「産業経済 ~賑わいと活力を興すまちづくり~」でございます。
【農業の振興】
はじめに農業の振興についてですが、農業を取り巻く状況として、現在、農業に携わる方々の高齢化や担い手不足など「人」に関する課題と、遊休農地や管理者不在の農地など「土地」に関する課題が全国的に顕在化しております。
このような課題に対して、国では農業経営基盤強化促進法等を改正し、人と農地に関する課題解決策の一つとして、地域ごとの農業の将来の在り方や農地の効率的かつ総合的な利用を図るために必要な事項を記載した、「地域計画」の策定を掲げております。本市では令和 7年3月の策定に向け、担い手の確保育成、農地の集積・集約化、スマート農業の推進、耕作条件の改善、守るべき農地の地図化について、農業者をはじめ、農業委員会や土地改良区などの関係機関と協議を進めており、令和7年度からは、この地域計画に沿った本市の農業振興を推進することとしております。
まず、農業担い手の育成、確保につきましては、営農の定着及び新規参入の促進に向けて、引き続き、関係機関と連携した就農前後のサポートや就農に必要な機械、設備の導入等に対する支援のほか、市独自の支援策として、果樹農業研修事業や親元就農者に対する支援に取り組んでまいります。
スマート農業につきましては、近年、施設園芸での環境制御測定装置や自動換気装置などスマート農業機器の導入が進み、令和6年度には13件の導入、令和7年度は20件の要望があっております。このような機器の導入により、トマトやいちご等のハウス内の温度を自動で適正に保つことが可能となり、農産物の安定した収量増加や品質向上による所得の向上、労働の負担軽減が期待されます。
さらに、令和7年度からは、農業用ドローンの操縦技能習得のための支援制度を新たに創設し、農業現場におけるドローンの活用を積極的に推進いたします。今後も国・県の補助事業を活用し、更なるスマート農業の普及拡大に努め、産地の維持拡大に取り組んでまいります。
これらの施策をはじめ、遊休農地対策や環境保全型農業の推進、農産物のブランド化などに引き続き取り組むことで、農業者の所得向上はもとより、担い手の減少や農業従事者の高齢化などの課題解決につなげ、安定した農業経営と持続可能な地域農業の実現に努めてまいります。
【農作業体験交流事業】
南島原市内で農業をやってみたいという方々、例えばUターンやIターン、非農家、学生などを対象に、農業委員や農地利用最適化推進委員が所有するほ場等において、農業体験や交流などの多様な体験を提供し、南島原市での就農意欲を高めるきっかけづくりを行うことを目的として、令和7年度から新たに「農作業体験交流事業」に取り組むこととしております。
【育てる漁業の推進】
次に、育てる漁業の推進についてですが、令和4年度から3か年計画でアサリとウニの養殖実証事業を行ってきました。令和7年度からは実証結果を基に、地元漁業者や関係機関と連携・協力し、水産加工への支援やメディアを活用した販路拡大に取り組むことで、漁業者の所得向上を目指してまいります。また、海底耕耘事業、種苗放流事業、イカ産卵用施設設置への補助についても引き続き取り組み、資源回復に努めてまいります。
漁港の整備につきましては、育てる漁業の推進のため、養殖ひじきの干場として、口之津町早崎漁港久木山地区の用地舗装を予定しております。また、布津町貝崎漁港整備工事についても、令和6年度に引き続き事業を実施してまいります。
【農業生産基盤の整備】
農地の基盤整備につきましては、生産効率を高め競争力のある「攻めの農業」に向け、担い手への農地集積の加速化や作物の高付加価値化等を推進するため、農地の区画整理・農業用用排水施設の整備等を県が事業主体となり行っております。取組内容でございますが、令和6年度に加津佐町空池原地区の基盤整備、約74ヘクタールが完了しております。また、西有家町見岳地区、深江町馬場地区、加津佐町津波見地区につきましては、引き続き事業を推進してまいります。
【そうめん産業の振興】
そうめん産業の振興につきましては、島原手延そうめんの知名度を向上させるため積極的に情報発信を実施しております。これまでの取組により、近年の販売額が70億円を超えるなど、知名度、消費者の評価も上昇してきていると考えております。引き続きメディアによるPRで知名度を高めつつ、試食イベントやキャンペーンなどを充実させることにより、島原手延そうめんの需要拡大を図ってまいりたいと考えております。また、産地を維持していくためには生産量の確保や後継者への支援が必要不可欠であることから、令和7年度もそれらの諸課題に対する支援に取り組むことで、そうめん産業の振興を図ってまいります。
【地元企業等の振興】
地元企業等の振興でございますが、新たに創業する事業者への創業支援をはじめ、設備投資や販路拡大などの事業拡充に取り組む事業者に対して支援する「中小企業ステップアップ支援事業」について、DX化や事業承継といったニーズにも対応できるよう、令和7年度から制度を拡充することとしております。また、本年2月1日でサービス開始から4年を迎えました電子地域通貨МINAコイン事業でございますが、現在、加盟店舗数429店舗、令和6年の決済額10億5千万円と、順調に利用が拡大しており、今後も地域経済の活性化のため、地域になくてはならない事業として一層の推進を図ってまいります。また、市民の住生活環境の改善と地域経済の活性化の促進を目的に実施しております「住宅・店舗・旅館等リフォーム資金補助金」は、現在も年間140件ほどの申請が有り、今後も市内への経済波及が見込まれることから、令和7年度も引き続き実施してまいります。
物産振興につきましては、市の優れた特産品を「おいしい南島原ブランド」として認定し、商品のPR、販路拡大などの支援を行っているところであります。引き続きおいしい南島原ブランドの認知度向上と認定商品の販売促進に努めてまいります。
【堂崎港埋立地】
かねてより埋立工事が進められていた堂崎港埋立地については、令和6年に埋立地整備計画が決定し、長崎県による不動産鑑定結果に基づき、各区画の売却予定単価が決定したところです。これを受け、令和7年度に長崎県から土地を購入することとしておりますので、土地購入に係る予算を令和7年度予算案として計上しております。
この堂崎港埋立地は、人口減少対策の一環として若者が安心して働くことができる雇用の場の拡大と、市の産業振興を図るための企業誘致用地として活用するため、今後も関係機関とも連携を取りながら企業の情報収集に努め、積極的な企業誘致を推進してまいります。
【観光の振興】
次に、本市の観光の振興についてですが、これまで、農林水産業が盛んな本市の特徴を活かして農林漁業体験民泊を推進しており、多い時には年間57校、11,450人の修学旅行生を受け入れてまいりました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、受入ができない時期もありましたが、受入態勢を整えてきたこともあり、令和7年度には、ようやく16校、約2,000人の受け入れが見込まれるまでに回復しております。
令和7年度においても、南島原ひまわり観光協会と連携して、受入家庭数の確保やセールスなどに積極的に取り組み、令和8年度以降の修学旅行受入拡大に努めてまいります。また、風光明媚な本市の観光資源である「鮎帰りの滝」において、自然を活かした公園の整備を進めていくため、まず令和6年度はトイレと駐車場の整備を行い、利便性の向上に努めてまいりました。
令和7年度も引き続き、鮎帰りの滝までの通路や見学スペースなどを含めた公園の整備に取り組むこととしておりますので、地元の方々のご理解とご協力をいただきながら、周辺の道路整備を含めた公園整備計画の策定を進めてまいりたいと考えております。
4 健康福祉 ~健康でつながりを大切にするまちづくり~
次に、基本柱の4点目「健康福祉 ~健康でつながりを大切にするまちづくり~」でございます。
【高齢者福祉の充実】
まず、高齢者福祉についてですが、本市の高齢化率は、令和6年12月末現在で約43パーセントとなっており、今後、団塊の世代の高年齢化が進むにつれ、75歳以上の後期高齢者の増加が見込まれております。
このような状況にあって、高齢者の皆様が、いつまでも安心して住み慣れた地域で暮らしていくことができるよう、「生きがい・健康づくり」、「介護予防・生活支援」、「在宅医療・介護連携の推進」に引き続き取り組んでまいります。
【障がい者福祉の充実】
障害者の施策については、障がいのある人もない人も共に生き、共に過ごすことのできる「共生社会」を実現するために、引き続き相談体制の強化と福祉サービス提供体制の確保・充実に努めます。また、障がいがある方や介護する家族が自立した日常生活及び社会生活ができるよう、令和7年度から新たに、医療的ケア児を支える家族の負担軽減を図る事業に取り組みます。
【子育て支援の充実】
次に、子育て支援の充実でございますが、本市の将来を担う子どもたちが健やかに育つ環境を整えるため、「こども基本法」と「こども大綱」を踏まえつつ、あらたに子どもの貧困対策や若者支援施策を加えた「南島原市こども計画」を策定中でございます。今後は、この計画の施策を着実に実施し、子育て環境の充実に向けて、国、県、関係団体や市民と一体となって取り組んでまいります。
まず、令和7年7月から、新たに高校生世代を福祉医療の現物給付の対象といたします。これにより、今後は全ての子どもにおいて福祉医療費の申請手続が不要となり、医療機関窓口での支払いの負担が軽減されます。さらに、予防接種や乳幼児健診のデジタル実装を目指し、妊娠・出産・育児をサポートする「電子母子手帳」を新たに導入いたします。
また、時間を問わず、スマートフォンなどで妊娠、出産、子育てに関する相談ができる「小児科・産婦人科オンライン相談」、妊娠中や産後の医療費の助成を行う「妊産婦医療費助成」、「妊婦のための支援給付金(出産・子育て応援給付金)」及び「生殖補助医療費助成事業」など、引き続き全ての妊産婦、子育て世帯、子どもへの一体的な相談・支援を行ってまいります。
【予防接種の実施】
新型コロナワクチン接種につきましては、インフルエンザ予防接種と同様、65歳以上の高齢者や基礎疾患を有する60歳から64歳までの方に、秋冬の定期接種として実施しております。また、令和6年度から一部助成をいたしました帯状疱疹ワクチン接種は、令和7年4月から国の制度による定期予防接種となります。今回の制度では、原則65歳の方が接種対象となりますが、5年間の経過措置として、70歳、75歳、80歳など、5歳刻みの方も対象となり、65歳以上の方については、5年間のうちにすべての方が接種できる制度となっております。
子宮頸がんワクチンについて、国は、積極的勧奨の一時差控えにより接種機会を逃した対象者に対して、通常必要な3回接種のうち、少なくとも1回は令和7年3月までに受けることを条件に、無料の救済措置の期限を令和8年3月まで延長する方針を決めました。
市では、引き続き地元医師会と協議しながら、接種体制の整備などに努めてまいります。
【医療提供体制の確保】
市民の皆様が健康で安心して生活していくうえでは、日常の医療サービスをはじめ、住民健診や母子保健、学校保健など必要なサービスを提供できる医療体制が必要となります。医療機関の更なる減少をくい止めるため、本市独自の「診療所の開設・承継」及び「在宅医療」を促進する支援制度を令和7年度に新たに創設し、医師等の誘致に取り組んでまいります。
【健康づくりの推進】
次に、市民の皆様の健康づくりにつきましては、令和6年3月に策定いたしました「南島原市こころと体、口腔の健康づくり、食育推進計画(ひまわりプラン(4))」に基づき、健康寿命の延伸や医療費の適正化を目指し、医療費が高額となる心疾患や骨折の予防対策の強化などを図ってまいります。
歯と口腔の健康づくりにおきましては、心疾患や糖尿病とも関連のある歯周病予防健診を40歳以降から20歳以降に拡充し、若年層からの歯周病予防に取り組みます。また、「特定健康診査」、「がん検診」につきましては、市民の利便性や受診率の向上を図るため、24時間予約可能なWEB予約システムを導入することとしております。このほか、保健指導においても、オンライン保健指導の普及啓発を図り、市民のニーズに合わせた保健指導の体制を整備いたします。
国民健康保険や後期高齢者医療保険などの「健康保険証」につきましては、令和6年12月2日から「マイナ保険証」に移行したことから、市としましては、引き続き、広報紙やホームページなどを通じて「マイナ保険証」の周知を行いながら、利用登録及び医療機関等での利用促進を図ってまいります。
5 人づくり ~次代を育む人づくり~
基本柱の5点目「人づくり ~次代を育む人づくり~」でございます。
【学習環境の整備】
学習環境の整備につきましては、学校施設の老朽化などの問題に対応しながら、将来にわたって子ども達がより良い環境で学校教育を受けることができるよう、防犯カメラの設置、照明のLED化、トイレの改修、空調設備改修及び校舎内部建具改修などに取り組んでまいります。また、小中学校の適正規模・適正配置につきましては、在り方検討委員会のなかで、基本方針策定に向けた検討を進めてまいります。
【学校給食費の支援】
昨今の食材費や燃料費の高騰に加え、主食である米の値段も高騰しており、令和6年度に値上げした現在の学校給食費では質や量を維持した学校給食の提供が困難になることから、令和6年度に引き続き令和7年度も給食費の値上げをせざるを得ません。しかしながら、実際の保護者の負担額が令和6年度から値上げとならないよう、小学生で月額800円、中学生で月額1,000円の給食費の支援を行い、物価高騰の影響を受けている子育て世代の負担軽減を図ってまいります。
【先進的海洋センター整備事業】
B&G財団の助成事業である先進的海洋センター整備事業につきましては、令和6年12月25日付で、本市が全国で唯一、事業採択の内示を受けたところでございます。
今後の取組としましては、令和7年度に、加津佐町前浜のB&G艇庫、バンガロー、女島ハウスの解体工事等を行うとともに、海洋センター複合施設および宿泊棟の基本・実施設計に取り組み、その後令和8年度から順次建築工事を実施し、令和10年度の供用開始を目指しております。また、各種団体と連携した海洋教育・体験プログラムや地元学生を中心に多世代・異業種と協働した人材育成プログラムなどのソフト事業の実施に向けた準備も進めてまいります。
6 安全安心 ~安全安心に暮らせるまちづくり~
基本柱の6点目「安全安心 ~安全安心に暮らせるまちづくり~」でございます。
【防災行政無線の更新】
はじめに、防災行政無線機能拡充等整備工事についてですが、令和5年度から設備の老朽化により全体の更新工事を行っておりましたが、地域住民の皆様のご理解とご協力により、令和7年3月に防災行政無線の本体設備、中継局、屋外拡声子局の更新工事が全て完成します。今後も、防災ラジオ等を併用した緊急時の情報発信の強化・拡充に努めてまいります。
【危険箇所対策の推進】
次に、危険箇所対策の推進についてですが、地すべり対策につきましては、南有馬町矢竹地区、南有馬町座木地区、加津佐町花房地区の対策工事を実施しております。また、県が策定した長寿命化計画に基づき、老朽化が進行した地すべり指定区域内の施設について、対策工事へ向けた詳細設計を実施することとしております。また、ため池整備事業につきましては、令和7年度に有家町高野ため池のほか、長崎県防災重点農業用ため池に係る防災工事推進計画に基づき改修工事を実施するなど、危険箇所対策の推進に取り組んでまいります。
令和6年5月14日に発生した大抜地区の地すべりにかかる復旧工事につきましては、地すべりで流出した土砂の排出やボーリング暗渠工の工事が、令和7年度以降、長崎県により実施される予定となっております。市としましても引き続き、一日でも早い復旧に向けて、県と一体となって早急な工事完成に努めてまいります。なお、地すべり区域内にある市道山洞夏吉線が、現在、通行止めとなっております。
夏吉地区をはじめ地元住民の皆様には大変不便な生活を強いられている状況であり、国及び県と協議を重ね、一刻も早い復旧を目指しております。また、迂回路となっております市道西中谷線については、離合場所の設置及び舗装修繕を令和6年12月に整備完了しております。
7 基盤整備 ~世代を問わず暮らしやすいまちづくり~
基本柱の7点目「基盤整備 ~世代を問わず暮らしやすいまちづくり~」でございます。
【市内道路網の整備】
まず、市内道路網の整備につきましては、利便性の向上や安全性を確保するため、市道改良事業、市道維持事業、橋梁及び市道舗装の長寿命化事業により、計画的な整備を行ってまいりました。引き続き、道路整備の有効性、緊急性等を勘案し、優先度が高く、現場条件の 整ったものから計画的に整備を進めてまいります。
【自転車歩行者専用道路の整備と活用】
自転車歩行者専用道路の整備につきましては、令和6年度までに約28.4キロメートルを着手し、このうち約20キロメートルの供用を予定しています。令和7年度は、未整備区間の整備工事を進めてまいります。
自転車歩行者専用道路の活用につきましては、これまでにサイクリングマップの制作や、既に開通している自転車歩行者専用道路へのサイクルベンチや観光スポットへの誘導版の設置等に取り組んできたところです。さらに、令和6年度においては、市民の皆様の気運醸成を目的に、かづさ夢・手づくりふれあい祭りにおいてサイクルイベントを開催したほか、自転車歩行者専用道路を始め、市内の各所を自転車で巡るサイクリスト向けイベント「第1回ツール・ド・南島原」を令和7年3月23日に開催し、広く市外へもPRしてまいりたいと思っております。
令和7年度においては、自転車歩行者専用道路が完成することを見据え、SNSやメディアにおいて情報発信をしていくとともに、当該道路を歩いてもらうウォーキングイベントや、市民向けのサイクルイベント、サイクリスト向けのイベント「ツール・ド・南島原」を継続して開催してまいります。
【島原天草長島連絡道路早期事業化に向けた要望】
令和3年7月に国で策定された「九州地方新広域道路交通計画」において、南島原市が起点となる「島原天草長島連絡道路」が広域道路ネットワーク路線の構想路線として位置付けられました。この路線のうち南島原市の約30キロメートルの区間は、県央地域につながる「島原道路」と連続した、島原半島を縦断する重要な道路であります。また、同じく構想路線であります「島原半島西回り道路」につきましても、本市南西部から雲仙市につながる重要な道路であります。
島原半島の安定的な通行や輸送確保はもとより、自然災害における避難や緊急医療体制強化などを図るため、早期事業化に向けて、令和5年度に市議会に設置されました「島原半島南部地域高規格道路建設促進特別委員会」とともに、島原半島近隣自治体や道路整備促進期成会と連携した要望活動に取り組んでまいります。
【デマンド型乗り合いタクシー】
令和4年9月から公共交通空白地域における市民の生活エリア内の移動手段として実証運行を行っていた「チョイソコみなみしまばら」は、令和6年7月からエリア間の乗り継ぎを可能としたほか、土曜日の運行やWEBでの会員登録などを開始し、10月には本格運行へ移行しました。令和6年12月末現在で1,826人が会員登録されており、多くの市民の皆様にご利用いただいておりますが、より一層の利用促進を図るため、積極的な周知活動に努めてまいります。
【河川の整備】
本市が管理する普通河川及び準用河川については、国の制度である「緊急自然災害防止対策事業」「緊急浚渫推進事業」を活用した河川の護岸改修、浚渫、除草、樹木伐採により氾濫を防止し、多目的な機能の向上並びに回復を図ってまいりました。
引き続き、事業の対象となる市内全域の河川の調査を実施し、事業計画の策定を行うとともに、有家町の榎田川の護岸改修や流下機能の低下した河川の浚渫など、現場条件が整ったものから計画的に整備を行ってまいります。
【空家対策の強化】
本市における空家の総数は、現在約1,700件ですが、人口減少が進む中、使用目的のない空家が今後も引き続き増加することが見込まれており、危険な空家の増加に伴い防犯・防災・衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
そこで、老朽化した危険な空家所有者の自主的な除却を推進し、安全・安心で良好な住環境を確保するため、危険空家の除却費支援や、空家相談会の開催などに引き続き取り組み、地域住民の生命、身体、財産の保護、生活環境の保全に努めてまいります。
【DXの推進】
本市におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進につきましては、令和6年度は公共施設予約システムを導入しました。これにより、スマートフォンやパソコンから、いつでもどこでも空き状況の確認などが可能となります。また、一部の施設では、同システムと連動して施設利用の際に鍵の受渡しが不要となるスマートロックシステムも導入いたしました。今後は、予約システムの機能拡充を含め、市民の皆様が、会議室や体育施設などをもっと気軽にご利用いただけるよう、更なる利便性の向上に努めてまいります。
令和7年度は、各支所に遠隔相談窓口を設置し、テレビ会議形式で本庁職員が直接相談などに対応できる環境を整備するため、「デジタル相談窓口」の導入に取り組みます。この新しい取組により、市役所本庁舎まで足を運ぶことなく、近くの支所で行政手続や相談ができるようになりますので、市民サービスの向上につながるものと考えております。
8 協働行政 ~健全で持続可能なまちづくり~
基本柱の8点目「協働行政 ~健全で持続可能なまちづくり~」でございます。
【ふるさと応援寄附】
ふるさと応援寄附につきましては、令和6年12月末までの寄附額が約13億4,100万円と、令和5年12月末と比較して3億6,000万円ほど増えており、市内の事業者の所得向上と地域活性化につながっているところであります。
令和7年度は、これまでの取組に加え、事業者と連携しニーズに応じた返礼品の企画や、各ポータルサイトの精査による効率アップなどに取り組み、更なる寄附額の増加を目指し、貴重な自主財源の確保と地域振興に努めてまいります。
【行財政改革の更なる推進】
次に、行財政改革について、でございますが、本市では、歳入の大半を依存財源に頼る一方、歳出の大半を義務的経費などの経常経費が占めており、厳しい財政運営を余儀なくされていることから、市の課題解決や市の活性化に資する施策に要する財源を確保するため、行財政改革に努めております。
現在、公共施設等総合管理計画に基づく公共施設の統廃合や、DXによる業務効率化、補助金等の見直しなどに取り組んでおります。特に補助金等の見直しについては、令和6年度の政策評価制度を通じて全体の4分の1にあたる61の補助金等について個別に評価を行ったところであり、令和7年度の政策評価制度上で、残りの補助金等を全て評価することとしています。
【市役所の組織改編】
次に、市役所の組織改編でございますが、本市を取り巻く社会情勢に対応していくため、令和7年4月1日付けで市役所の組織を一部改編することにいたしました。まず、公共施設等総合管理計画や行政改革の確実な推進を図るとともに、将来の市の機構組織や支所のあり方を模索するため、これらの推進を担うための組織(部署)を、人事課内に新たに設置いたします。
次に、これまで2課室2班で行っていた文化財課と世界遺産推進室の事業について、より一体的、かつ積極的な文化遺産と世界遺産の推進を図るため、世界遺産推進室を文化財課に統合し、1課2班体制に改編します。
しかしながら、近年のエネルギー価格・物価高騰や少子高齢化・人口減少などの影響による地域経済・景気の減退に伴う市税等の減が見込まれること、さらに合併特例債の発行期限が令和7年度までとなっていること、公共施設の維持管理経費が増加傾向にあることなどを勘案すると、これまで以上に厳しい財政運営を余儀なくされることが見込まれます。